2012年4月23日月曜日

リリカ|kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)


リリカ
一般名;プレガバリン

リリカは日本では2010年4月に発売されている。疼痛系では画期的な薬と思う。最近発売のこのタイプの向精神薬は、リリカ、トピナのように国籍不明のアニメの女の子の名前の如きネーミングになっている。ラミクタールはそれほどではないが。とにかく名前が薬らしくない。

ラミクタール、トピナ、リリカは3姉妹といった感じでしょうか?

リリカの綴りは、Lyricaであるが、なかなか洒落ている。(yが入っているところとか)この3姉妹はかわいい名前だけでなく、驚愕する薬であることも共通している。

リリカはファイザーとエーザイで併売されている。エーザイは非常に社員待遇の良い製薬会社らしいが、ピンポイントで極端に売り上げる薬をいくつか持っている。ファイザーにとっ� �リリカは世界中で膨大な売り上げを誇る主力商品の1つである。現在110の国と地域で承認されている。

リリカはカプセルの剤型であり脱カプセルも可能。長期服用しても鎮痛効果が減弱しない。

日本では25、75、150mg3種類の剤型がある、75㎎錠で167円。日本の当初の効能・効果は帯状疱疹後、神経痛治療薬とされ、疾患的に処方が非常に制限されていた。リリカは海外のガイドラインで帯状疱疹後神経痛の第一選択薬である。

リリカは実は帯状疱疹後神経痛以外の漠然とした慢性疼痛に有効であり、適応拡大が待たれていた。日本はドラッグ・ラグの問題が精神科以外でもしばしば指摘されており、そういうこともあるのか、リリカは平成22年10月中、適応拡大になったのである。帯状疱疹後神経痛だけではなく、「末梢性神� �障害性疼痛」の効能・効果に変更された。

これは厳密に言えば、適応拡大と言うより適応の変更である。今は帯状疱疹後神経痛という効能自体が書かれていない(もちろん使えないわけではないが)。

リリカは電位依存性Ca2+チャンネルのα2δサブユニットに結合することによりCa2+の流入を抑制し、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制することで鎮痛効果を発現する。

リリカを処方していると、温和な気分安定化薬っぽい薬であることに気付くが、躁状態には効果があまりないように思われるので、これを気分安定化薬と呼ぶのはやや苦しい。さすがに。


十代の年齢のうつ病

リリカは穏やかな抗うつ効果持ち、また不安にも効果が高い。海外では末梢性神経障害性疼痛以外にも種々の適応がある薬の1つである。

リリカは実はガバペン系の薬であり、こういうことからも疼痛に効果があることがわかる。リリカは抗てんかん作用も持つのである。リリカとガバペンは同系統の薬であるが、服用しやすさがかなり違う。これは血中濃度の上がり方の相違も関係している。リリカはガバペンより副作用が少ないのである。

またリリカは肝代謝がなく未変化体のまま放出される。相互作用が少ないと言われている。この点で、少量であれば老人にも推奨できる。

リリカとガバペンは浮動性めまい、傾眠、浮腫などを主とした副作用を持つが 、リリカの方がこれらの副作用が少ない。その理由だが、ガバペンは「血中濃度の上昇が線形ではない」ことが関係している。リリカは血中濃度は線形になっているのである。その分、副作用が緩和する。

リリカは効果が早期に出現し、患者さんによれば翌日から効くという。日本では、75mg2カプセル150mgから開始し600mgまで可能と書かれているが、当初150mgは多すぎると思われる患者さんがけっこういる。

リリカは25mgカプセルという腎障害を持つ患者さん向けの剤型があるが、この25mgカプセルはかなり便利である。老人であれば、25mg1カプセルから開始するくらいの慎重さが必要と思う。なぜなら、いきなり150mgから開始すると転ぶからである。

老人では25mg1~2カプセルで十分という人がけっこういる。(薬に弱い� ��汎性発達障害の人も同様)

リリカがどのようなメカニズムで、向精神作用を持つのかは謎である。リリカは広汎性発達障害系の人に使うと体がかなり動くようになり、ひきこもりが改善する人たちがいる。また全般性不安障害にも有効なので、この点でも広汎性発達障害の人にも良い。

しかし、不思議に思われるのは、うつ状態や全般性不安障害に有効なくせに「パニックを悪化させる」人がいること。この点は少しブプロピオンに似ている(ブプロピオンは抗うつ剤だが不安には効果が乏しい)。あまり自信がないが、体を動かせるようになることはひょっとしたらドパミンに関与しているのかもしれない。実際、僕の患者さんでパニックを悪化させるために中止した人がいる。


妊娠中の乳首に小結節

リリカを使っていると、痒みも痛みも一緒というのが良くわかる。ある患者さんは足の原因不明の疼痛と全身の痒みに悩んでいたが、リリカを少量服薬することで魔法のように症状が消えた。どこの病院でも治らなかったが、うちの病院で初めて良くなったと言いとても喜んでいた。実はこのおばあちゃんの娘さんを治療していて、症状が非常に似ていたため、呼び寄せて処方したのである。彼女によると、リリカをやめると、胸が非常に痒くなるらしい。

リリカは慢性疲労症候群にも有効である。特にリウマチないし、リウマチではないがその家系であり、疼痛よりもむしろ慢性疲労やうつ状態に悩んでいる人たちに非常に有効なことがある。ガバペンより服用し� �すく、トレドミンより頻脈などの自律神経系副作用が出にくいのが良い。まさに遂に救われたといったレベルで改善する人もいる。

その点で、リリカは「神の薬」と言う人もいるほどである。(クリスマス風に・・)

リリカには眠さという副作用があり、これを飲むと眠剤が必要ないと言う人もいる。このような人はリリカは寝る前に服用するのが合理的である。

一方、リリカを飲むと非常に活発になり、頭がはっきりして夜眠れなくなるという人もいる。こういう人は朝、服薬するのが良い。これは服用してみなければわからないものである。

リリカの欠点はトピナと同様、時に認知に悪影響を及ぼすことである。一瞬の判断の鈍さや物忘れの多さなどが出る人が意外にいる。この点でもリリカは少量� ��ら開始すべきだし、添付文書の150mgから開始というのはあまりにも過激である。

リリカは車やバイクの運転は最初、どのくらい影響が出るか見極めるまで止めておくのが良い。僕の患者さんでたぶんリリカのために車の自損事故を起こした人が3人もいる。

例えば、交差点に入り右折する時に、対向車線の車の速い流れをやり過ごす際、早い判断でさっと右折することが難しくなったりする。ちょっと危ない感じを意識されるのである。

ある患者さんはあっという間に、ガードレールにぶつかったらしい。リリカは一瞬意識を失ったりはしないが、判断が遅くなるのである。


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自転車などではリリカの2つの認知・運動面の悪影響を感じられる人もいる。リリカ服用中に自転車に乗っていると、ややふらつくと言う。これはリリカの運動面の副作用である。また併せて、判断の遅さも感じると言う。この人はまだ若く隔日で25mgだけ服用。あまりにも精神症状の効果が大きいため、少量だけ服用している。

リリカは2010年10月に適応が拡大され今後、整形外科、内科、外科を中心に爆発的に処方されるようになるだろう。だからこそだが精神科以外の医師も、患者さんへこれらの副作用の注意喚起を十分にしてほしいと思っている。一般科では精神症状の影響について、精神科医ほど意識されな� �からである。

リリカについては、もう少し時間が経ってからエントリをアップしようと思っていた。しかし、メールでの質問がけっこうあることや副作用について知ってほしいこともあり急遽、年内にアップすることにした。

他、リリカは「肥満」の副作用が出やすい。ここが認知に悪影響を及ぼすトピナとの決定的な相違である。リリカはとにかく甘いものがほしくなると言う人が一部にいる。

真の慢性疼痛の人たちはうつ状態も伴い、痩せている人が意外にいる。彼ら(彼女ら)は食欲が改善することは非常にメリットになる。しかし精神症状が改善してくると、食欲増加、体重増加がデメリットとして意識されるようになるのである。

なおリリカの催奇形性リスク(FDA)はCである。

【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。

ラミクタール、トピナ、リリカ3姉妹についての簡単なまとめ。

体重
ラミクタール;中立。少なくとも増加は稀。
トピナ;一般に減少する。食欲や過食が軽減。効果がない人もいる。
リリカ;しばしば体重増加、過食が出る人もいる。


認知
ラミクタール;改善することが多い。
トピナ;時に認知に悪影響。健忘、判断の遅さが出る。
リリカ;トピナに似ている。時に認知に悪影響。健忘、判断の遅さが出る。

疼痛

ラミクタール;ある程度有効である。リリカに比べると弱い。
トピナ;ある程度有効である。リリカに比べると弱い。
リリカ;傑出している。驚愕するレベル。

うつ状態
ラミクタール;特に双極性のうつ状態に推奨できる。単極性でも有効。
トピナ;うつ状態を改善する確率は下がるが一風変わった改善効果を持つ。
リリカ;温和なうつ状態改善効果を持つ。

ひきこもり
ラミクタール;敏感性などの緩和。抗うつ効果などを通じて有望な薬物。
トピナ;ラミクタールと効き味が異なる。敏感性などの緩和。有望。
リリカ;抗うつ、全般性不安障害などの効果を通じ治療的である。

広汎性発達障害の種々の症状
ラミクタール;有望(過去ログ参照)
トピナ;有望(過去ログ参照)悪化にも注意を要す。
リリカ;不思議なかかわり方で、良い人がいる模様。

中毒疹
ラミクタール;10人に1人くらいは中毒疹が出現。初期数ヶ月は慎重投与。
トピナ;かなり中毒疹の確率は低い。稀に見る程度。(経験上、1名)
リリカ;かなり低いのではないかと思われる。僕は経験なし。

これは実は「近所のおじさん(4)」の続きのエントリなのだが、「リリカ(5)」のタイトルは5と言うのが意味不明で誤解を招きかねないので、独立したエントリとした。これはあの一連のエントリの補助的なものと考えてほしい。このためテシプールはテーマを廃止し、「向精神薬」に移動している。(アメブロのテーマ数は有限なので)。

参考
ラミクタールのテーマ
トピナのテーマ
広汎性発達障害のテーマ



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