人格障害
人格とは
普段使う性格と同じような意味です。
人格には「気質」と「性格」が含まれるています。
「気質」は遺伝的な要素が強く、「性格」は周りの環境や、社会、文化などに強い影響を受けるものです。
人格障害とは
その人の持っている「人格」が常道からはずれてしまって、社会生活に障害を来すものを言います。
青年期や成人期早期に始まることが多く、長期にわたってその人格が安定しいて、苦痛を伴います。
この中でその障害が他の精神障害に原因がないものを一般的に人格障害といいます。
シュナイダーという人は、人格異常を「平均からの変異や逸脱」としています。
この中では、いわゆる天才や聖人も人格異常となるので物議をかもし 出しました。
DSM(アメリカの精神医学の診断基準)では、
「個人の最近(過去1年)の、またはもっと長期にわたって持続する機能状態に特徴的な行動傾向や人格傾向のことである。
これらの組み合わせのタイプは重大な社会的、職業的、主観的な苦痛をもたらすもの」となっています。
機能障害とは、「認知、感情、対人関係、衝動のコントロールの領域の2つ以上の領域に及ぶこと」などとなっています。
一般的な人格とは、連続性(かけ離れたものではない)があります。
このことが他の精神障害と異なる点です。
人格障害の考え方の変化
「人格障害」の前身が「人格異常」です。
人格異常の概念は、18世紀以降のヨーロッパの精神病質概念からきています。
ちな� �に、人格障害という考えはアメリカ式の考えです。
では、歴史を振り返ってみることにしましょう。
19世紀中頃精神医学の体制がようやく整いつつあった時代、
精神病(精神分裂病、うつ病、神経症など)や脳器質性病態(てんかん、痴呆など)ではないが、
明らかに(この場合精神が)健常者と異なる人々がいることに気がつかれていました。
精神病質者(精神病っぽい人)、変質者、社会病質者などとよばれてました。
イタリアの学者が天才と犯罪者を研究していく中で、天才者には変質者とてんかんが多いと主張し、
犯罪者にも多くの精神的・身体的変質兆候が発見されると主張しました。
ドイツ人の学者には精神病質を
「精神的な異常であるが、最悪の場 合でも精神病とすることはできないが、
最も軽い場合でも正常と言うことができな精神状態にあるもの」と定義しました。
つまり、精神病質を精神病と正常者の中間、境界、移行状態と考えたのです。
同じような考えで
「慢性の心理的な病的状態であり、妄想や幻覚などの重い精神病的な症状を示さないもの」
とする人もいました。
要するに、精神病とするには足りないけど、普通じゃない状態と言うことのようです。
現在の精神医学大系の原型を作ったとされるドイツのクレペリンは「精神病質人格」という項目で、
精神病質人格とは人格発達の著しい偏り、正常と精神病との中間領域にあたる、としています。
これも、今まで出てきた色々な考えとほぼ同じですね。
これ� �反対の考え方を示したのがさきほとでてきたシュナイダーという人の考えです。
精神病質を「病気とは無縁で、むしろ正常からの偏位、逸脱」としました。
また「その人格の異常性のため本人が悩むか、社会を悩ませるような異常人格者を精神病質者という」としています。
この考えは、現在も採用されています。
このように人格異常や人格障害に関しましては色々な考え方があります。
考え方として、人格異常を精神病と正常との中間なものと考えるか、それともまったく別なものと考えるかです。
現在は、その両者の考え方をそれぞれ採用しているような感じがあります。
人格障害の種類
人格障害には3つのグループ10種類に分けられています。
クラスターA、B、Cという風にグ� �ープ分けられます。
その特徴は、
- 遺伝的に分裂病気質を持っていることが多く、自閉的で妄想を持ちやすく、
奇妙で風変わりな傾向があり、対人関係がうまくいかないことがあります。
ストレスが重大に関係することは少ないですが、対人関係のストレスには影響を受けます。
このグループに含まれるのは「妄想性人格障害」「分裂病質人格障害」「分裂病型人格障害」の3つです。 - 感情的な混乱の激しい人格障害です。演劇的で、情緒的で、うつり気に見えることが多いです。
ストレスにかなり弱い傾向があります。
このグループに含まれるのは「反社会性人格障害」「境界性人格障害」「演技性人格障害」
「自己愛性人格障害」の4つです。 - 不安や恐怖感が非常に強い人格障害です。
まわりに対する評価や視線などが非常にストレスになる傾向があります。
このグループに含まれるのは「回避性人格障害」「依存性人格障害」「強迫性人格障害」の3つです。
全般的診断基準
上にあげた人格障害には、それぞれに診断基準というものが存在しますが、
これらの各類型ごとの診断基準にくわえて「全般的診断基準」というものを満たさないと、
人格障害があるとは言えません。
つまり、この人は人格障害があるな(全般的診断)と感じると、
次にどんなタイプの人格障害だろう(類型ごとの診断基準)を見ていくのです。
全般的診断基準は以下の6項目からなります。
- 次のうち二つ以上が障害されている。
認知(自分や他人、出来事を理解し、考えたりすること)
感情(感情の反応の広さ、強さ、不安定さ、適切さ)
対人関係
衝動のコントロール - その人格には柔軟性がなく、広範囲に見られる。
- その人格によって自分が悩むか社会を悩ませている。
- 小児期、青年期から長期間続いている
- 精神疾患(精神分裂業、感情障害など)の症状でもない。
- 薬物や一般的身体疾患(脳器質性障害)によるものではない。
となっています。
それぞれの人格障害についてみていきましょう。
妄想性人格障害
妄想性人格障害の基本的な特徴は「猜疑心」と「敏感性」の二本柱です。
そして、これに伴うものとして「不信」「論争好き」「頑固」「自負心」があげられます。
つまり、猜疑心が強く、嫉妬深いタイプがこの人格障害の特徴です。
さらに、すぐに人をねたんだり、疑ったりするので社会になかなかとけ込めません。
また、ちょっとしたことで怒りを爆発させることもあります。
あなたの妄想度を測るには、こちらをどうぞ。
では、実際の例を見てみましょう。
(症例)主訴 会社でうまくいかない 26歳の男性。一流企業に入社するも、仕事がいまいちうまくいかずイライラしている。 仕事ができないことや周りの人より出世が遅れているのを 「自分が地方の私立大出身だから、上司は差別している」と疑い、 「他の人と同じ仕事を与えられれば、自分はそれ以上の実力を発揮できる」と信じている。 自分の才能を発揮できないのは、色んな人が邪魔をするからだと考え、色々それを思い当たる節もある。 いつもそのことばかりを考えるので、時には激しい怒りを感じたり、暗く落ち込んだりしていて困っている。 普段から周りの人とうち解けようとせず、気むずかしく、秘密主義な人間と思われている。 また、他人の欠点はよく批判するが、自分のことを言� ��れるとカッ!!となって口論になることが多い。 |
このような人が、妄想性人格障害の典型的な例です。
こういう人は、疑い深く、緊張感があり、感情は冷たく、考えが頑固です。
妄想性人格障害の特徴をもう少し詳しく述べると以下のようになります。
- 周囲の人に対して、自分を出し抜こうとする、だまそうとする、
陥れようとするなどと常に警戒して疑っています。
他人の親切に疑いを持ち、親しくうち解けにくく、拘束を恐れ集団に属するのを嫌がります。
他人からは、気むずかしく、秘密主義で、尊大な人間だと思われたり、
ユーモアや楽しむといった能力に欠けているように思われがちです。 - 異常なほどの猜疑心から、ちょっとしたことで相手が自分を利用していると感じます。
さらに、病的な嫉妬深さで恋人が浮気していると信じ、その証拠を探し続けようとします。(病的嫉妬) - 頑固で非友好的で、すぐ口げんかをしやすいという性質があります。
人の弱みや欠点を指摘するのは得意です。しかし、自分のことを言われると激烈に腹を立てます。
自分の権利や存在価値を過剰に意識し、権威に対しては異常な恨みを抱きます。
新しいものに対しても非常に警戒をし、なかなか受け入れられません。(好争者) - 強い自負心があります。
内心では自分には非凡な才能があり、偉大な業績を残せると固く信じています。
この自負心によって、自分が才能を発揮できていないのは
他人が邪魔をしているためだと妄想的な確信を抱いています。
そして、この自負心には、敏感性もあり、ちょっとしたことで
「裏切られた」だの「だまされた」だの叫びます。(敏感者)
簡単にまとめますと下のようになります。
自己感 | 他者感 | 主な信念 | 主な考え方 |
正義 | 妨害的 | 動機が疑わしい | 油断なく用心深い |
無垢で高潔だ | 悪意のある | 警戒しろ | 隠れた動機を探る |
もろい | 差別的な | 信じるな | 告発する |
悪用の動機 | 反撃する |
さて、ここで妄想性人格障害の診断基準を見ていきましょう。
次の7つのうち4つ以上あれば妄想性人格障害が疑われます。